- 複利の発動条件は「退場しないこと」——生存の話の続きにある
- 2%定率リスクはそれ自体が複利エンジン。ロットが資金に比例して自動で育つ
- 実務は利益の半分出金・半分再投資。計画は最大DD込みで
ナギです。今日は、この街で一番誤解されている武器の話をします——複利。「利益を再投資して雪だるま式に増やす」、あの魔法です。
誤解というのは、複利が「速く増やす魔法」だと思われていることです。真実は逆で、複利は「遅く、しかし止まらなく増やす魔法」。そして発動条件がひとつだけあります——退場しないこと。つまり複利の話は、結局この街がずっとしてきた生存の話なのです。
複利とは——再投資の雪だるま
10万円を月+3%で運用するとします。利益を毎月引き出せば1年で+3.6万円(単利)。引き出さず翌月の元本に組み入れると、1年で約+4.3万円、5年で約+48.9万円——元本の約5.9倍です。利益が利益を生む構造、これが複利。アインシュタインが人類最大の発明と呼んだ(とされる)関数です。
グラフの大事な読み方はひとつ。最初の1〜2年、複利と単利はほとんど差がつきません。魔法が目に見えるのは3年目以降——つまり複利は「続いた者だけが受け取れる遅配の報酬」なのです。
FXの複利は投資信託と何が違うか
積立インデックスの複利は市場に任せる複利ですが、FXの複利は自分の期待値×自分の継続で作る複利です。ここに2つの含意があります。良い方: 検証済みの期待値(VOL.005)があれば、月数%は市場平均を大きく超える成長率になり得る。悪い方: ドローダウン(VOL.009)も複利で効く——資金が減った状態の−10%は、回復に必要な+11%をさらに遠くする。複利は増える方向にも減る方向にも働く両刃です。だから2%ルールが先、複利は後。順番を守ってください。
実装——「定率」が複利を自動化する
朗報があります。あなたがVOL.002で覚えた2%ルール(定率リスク)は、それ自体が複利エンジンです。資金が10万円なら1回のリスクは2,000円、12万円に増えれば2,400円——資金に比例してロットが自動で育つ。特別な「複利設定」は要りません。定率を守り、利益を出金しない。それだけで雪だるまは転がり始めます。
| 運用スタイル | 複利のかかり方 |
|---|---|
| 毎月全額出金 | 単利。生活費化——増えないが、収入にはなる |
| 全額再投資(定率) | フル複利。成長最速だが、含み資産のまま |
| 半分出金・半分再投資 | 折衷。モチベーションと成長の両立(実務のおすすめ) |
億街の実務推奨は3行目です。理由は心理面——1円も引き出さない運用は、いつか「現実のお金」の感覚を失わせます。月次の利益の半分を出金して使う(または貯める)ことで、複利の速度を少し譲る代わりに、10年続けられる現実感を買う。悪くない取引です。


複利を殺す3つの行動
①ロットの飛び級。資金が1.5倍になったからとロットを3倍にする——定率を壊した瞬間、複利は破産確率のブースターに変わります。②DD中の追加入金。雪だるまが溶けている最中に雪を足しても、坂の向きは変わりません(VOL.026の増資と同じ構造)。③焦りの乗り換え。2年目で「遅い」と感じて月10%の手法(という名の何か)に乗り換える——複利の果実は3年目から実るのに、その直前で木を植え替えるのが、一番よくある失敗です。
数字で持ち帰る——あなたの複利年表
最後に宿題です。あなたの検証記録(VOL.015)から月次の期待成長率を出し、複利計算機で5年分を眺めてください。月+1%でも5年で+81%——銀行預金の何十倍です。その数字を見てから、もう一度自分のロットを見る。「盛る必要、ありましたか?」——それがこの記事の結論であり、複利という遅効性の魔法との正しい付き合い方です。
2%の定率リスクを守っている(=複利は自動)。利益の出金ルールを決めた(推奨: 半分)。計画は平均でなく最大DD込み。資金が増えてもロットは定率のまま。3年目まで木を植え替えない。
出金ルールの実務——「半分出金」の運転方法
推奨した「利益の半分出金」を、実務に落とします。締めは月末1回。月次収支がプラスなら、その50%を翌月第1営業日に出金——金額でなく率で決めるのがコツです(金額で決めると負け月に矛盾します)。マイナスの月は出金なし、追加入金もなし(VOL.026の増資ルールと同じ)。出金した50%の行き先も決めておきましょう: 生活の楽しみに使う・貯蓄する・年に一度の増資原資に戻す——どれでも構いませんが、「使い道が決まっている出金」は複利を遅らせる罪悪感を消してくれます。
もう一つの実務が「複利の段差」です。定率2%は資金に連動しますが、ロットは最小単位(1,000通貨)刻みでしか増やせません。資金12万円で適正が1.2万通貨なら、1.2万通貨ではなく1万通貨に切り捨てる——端数は常に保守側へ。この小さな切り捨ての積み重ねが、DD時のバッファになります。
複利年表の作り方——5分でできる宿題の手順
本文の宿題を具体化します。手順①: 検証ノート(VOL.015)から直近3ヶ月の月次リターンを出す(例: +2.1%、−0.8%、+3.2%)。手順②: 控えめに見積もる——3つの平均から1%引いた値を「計画月利」にする(例: 平均1.5%→計画0.5%)。楽観は複利計算の毒です。手順③: 複利計算機に「元本・計画月利・60ヶ月」を入れ、出た数字をノートの表紙に書く。手順④: ロットを盛りたくなった日に、表紙を見る。
この年表の役割は予言ではなく錨(いかり)です。「計画月利0.5%でも5年で+35%」という控えめな現実が書いてあるだけで、「今月中に取り返す」という最悪の意思決定への距離が遠くなる。複利の魔法は口座の中で働きますが、複利の計算はあなたの頭の中で働く——両方使って、初めてこの遅効性の魔法は完成します。
よくある質問
複利運用の利益にも税金はかかりますか?
かかります。出金の有無にかかわらず、決済して確定した利益はその年の課税対象です(VOL.013)。「再投資したから申告不要」にはならない点に注意してください。
月何%を目標にすべきですか?
検証記録から出た自分の期待値が答えです。目安としては、1年目は月+1〜3%を「守れたら合格」のラインに。それ以上の目標は、たいていロットの飛び級を誘発します。
複利計算機はどれを使えばいいですか?
「複利計算 シミュレーション」で出る無料ツールで十分です。月利・期間・積立額を入れるだけ。大事なのはツールではなく、最大DDを想定に含めることと、出た数字を「焦り止め」に使うことです。
資金が少ないうちは複利の意味がないのでは?
金額の実感は薄いですが、意味は大きいです。少額期の複利運転は「定率を守る訓練」そのもので、この習慣が資金が増えた後の複利を支えます。10万円で守れない定率は100万円でも守れません(VOL.030)。
- 複利は「速く増やす」ではなく「遅く止まらなく増やす」魔法——発動条件は退場しないこと
- 2%の定率リスクはそれ自体が複利エンジン。特別な設定は不要
- DDにも複利は効く——両刃だから資金管理が先、複利は後
- 実務は「利益の半分出金・半分再投資」。現実感を買って10年続ける
- 複利計算は「焦り止め」として服用する。月+1%でも5年で+81%
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本コラムは一般的な情報提供・教育を目的としたものであり、特定の売買や投資判断を推奨するものではありません。FX取引は預託した証拠金を上回る損失が生じるおそれがあります。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。執筆: ナギ(億街の住人) / 検証・監修: 億街サロン運営。